劇団スポーツ 田島 実紘
高校生くらいまでは。
人にお金を借りることはもちろん、友達のお金を盗むことも、クレジットカードのリボ払いも、ギャンブルも、サラ金にお金を借りることも、全部「悪いこと」だと思っていました。自分には縁のない世界だと。
でも、20歳を過ぎたあたりから、クレジットの支払いを分割にしてみるところから始まって、年金を滞納してみたり、税金についての知識がつくようになって。25歳を超える頃には、「俺今このくらい稼いでるってことは、生涯年収は大体このくらいで、年金はこのくらいだから・・・」とか考えるようになって。
気づいたら、闇金ウシジマくんの世界はすぐそこで、アコムの看板が街中でやたらと目に入るようになっていました。
だって、お金が無いと死ぬから。
第27班『ゴーストノート』は、2019年度の演出家コンクールで最優秀賞を受賞した作品で、2021年3月10日から14日に、「劇」小劇場で上演されました。
真ん中にドラムセットが一台ドンとおいてある舞台。
青年がドラムセットを一式買って、レオパレスの家に設置するところから始まります。
そこに、青年の知り合いと思われる一組のカップルが訪れ、「お金を30万ほど貸してほしい」という話を始めます。ただどうやら、カップルの男と青年との間には、何やら確執があるようで…。
この物語は、よくある「青年がお金のために夢を諦める話」ではくくれない、底のない静かな絶望や、満たされることのない愛、受け皿のない若者たちが表現されていて、そこかしこに「やめてくれー!」ってなるポイントが散りばめられており、悶絶せずに見ることはできません。
特に、主人公である青年が惚れている女性がいるのですが、この女性には彼氏がいて、頻繁に主人公に連絡を取ってくるのです…。
やめてくれよ…!
彼氏いるのに、酔っぱらって肩とかにもたれかかるのやめてくれよ…!しょっちゅう電話してくる癖に、こっちがちょっとでも好きだっていう雰囲気見せると引いてくのやめてくれよ…!かっこ良いとこ見たいとか言うのやめてくれよ…!
男女問わず誰しも経験がある、「なんであんなやつに惚れちゃったんだろう…」っていう傷口を、ピンポイントでぐりぐりされます。僕は主人公に向かって、「そんなやつに金使っても何にもならないぞ!」と精一杯叫びましたが、届きませんでした。
電車の音が聞こえる高架下で、居酒屋のビールケースを勝手に借りて椅子にして、二人でコンビニで買った缶ビールを飲むだけの幸せの時間。アンダーグラウンドに片足を突っ込んだ気になって、世界からはみ出して二人だけみたいに感じても、それは全部幻想です。
いいですか、こっちが一生懸命その女の子の好きな音楽とか、映画とか、小説とかを読んで、一生懸命感想を言って、向こうが喜んでくれても。その子はこっちがおすすめしたものは絶対に見てくれません。
彼氏と喧嘩したって言って泣いてて、それを一生懸命慰めても。次の日には彼氏からもらったブレスレットかなんかを、ニコニコしながらはめてくるし。彼氏の次の二番でいいやと思っても、あなたは二番ですらありません。ましてや、自分の劇団の公演なんか、死んでも見てくれません。でもなぜか気にしてて、日程とかだけ鮮明に覚えてるんです、そういうとこだぞ!
…なんてことは、頭でもわかっているんですよねみんな。僕はなんだか運よく脱出できたから、ここで一生懸命叫びますが、あなたとお相手との間の愛は無限です。これからも大事にしてあげてほしいし、ずっと思い続けててほしいです。
こういった、身近な思い出が次々と掘り返されるような出来事の連続で、繰り返しになりますが本当に悶絶せずには見てられません。
ドラムの演出も本当に素晴らしく、青年の夢の象徴である「ドラム」が、あんなシーンやこんなシーンに繋がっていくのが、結構皮肉だなと僕は個人的に思いました。
主人公が最後まで本当に最低なところもまた良いんです。全部見終わったあとに最初のシーンを見ると、マジでなんだよこいつって思います。もちろんそれは、最低な一言じゃ片付けられない静かに自分の人生を受け入れていく切なる姿があるのですが…。
気になる方は、ぜひこちらをチェックして見てください。
第27班オフィシャルショップ
https://teamthe27.official.ec/
勝手に!はしご割りということで、勝手に宣伝してしまいました…!
ここに、「ゴーストノート」の公演DVDが売っております!!
3500円ですが、お金がなかったとしてもサラ金では最低1万円から借りれるところもありますし。あなたが劇団やバンドをやっているのだとしたら、売上金をちょろまかすのも良いでしょう。
お金がないと死にます。
でもだからこそ、お金と向き合って新たな人生を歩んでいくことは、決して後ろ向きな選択なんかじゃないはず。この教訓を胸に、僕は今日もアコムで生活費を借りに行こうと思います。
劇団スポーツを見た後は、ぜひ第27班に足を運んでみてください…!
第27班の公演情報は、こちら!
2022年3月24日(木)〜28日(月)
@王子小劇場
作・演出 深谷晃成
【キャスト】鈴木 あかり、箸本 のぞみ、大垣 友、もり みさき、深谷 晃(以上、第27班)、目崎 剛(たすいち)、やじり まおん、函波 窓(ヒノカサの虜)、大賀美 佑治、服部 美香
【チケット料金】
一般 前売3,800円/当日4,300円 ほか
【はしご割について】
一般前売料金、当日料金のみ可
【チケット予約】https://www.quartet-online.net/ticket/john27betty2022
HP→https://teamthe27.wixsite.com/official27
Twitter→https://twitter.com/TeamThe27
田島がクリエイティブパートナーをつとめる、劇団スポーツ『怖え劇』が気になる方はこちらをチェック!チケット発売中!